2020年キーボード活動の総評
随分と放置しましたが、いい機会*1なので今年のキーボード活動を振り返ってみます。
基本的にはポエムですが、どんな思想で設計したかみたいな葛藤を伝えられたらなぁと思っています。
無限の可能性の再設計
第1世代(ファーストジェネレーション)の無印、
第2世代(セカンドジェネレーション)のNexus,Altana(Col,Rowプレ配線済み)に続く、
第3世代、Suxen,Container,Chocの設計です。
第二世代との違いは対応するLEDで、タブ付きのYS-SK6812MINIに対応したことです。
あまりおおっぴらにしていないですが、一応表面実装のダイオードを載せれるようになっています。
個人的にはハンダブリッジのが早く実装できるのでノーマルSK6812MINI好きなんですが、
圧倒的に壊れにくいので現在はYSを推しています。
特に挟ピッチ対応のChocはe3w2qのアドカレでも書かれている通り、
19mmピッチは広すぎるという問題のソリューションになるのが一つと、
3Dキーボードの設計の自由度が上がるという点で期待しています。
Amatelus73の設計
シンメトリカルスタッガード(ハの字型のキー配列)には興味があって、
移行コストは比較的少なく初心者向けなのに、
シンメトリカルに行き着く沼人は沼底に沈んでいるため、
キー数が少ないものが多かったと思います。
// そしてその気持はよくわかる!!
そこで、キー数が多く、標準キーキャップを行入れ替えなしで使える、
比較的初心者向けのシンメトリカルスタッガードキーボードを設計しようと考えました。
モデファイアキーが左右非対称になるので、たまには一体型にすることにして、
ついでに分割ではハードルが高い、RGBMATRIX(RGBLEDよりきれいにLEDを制御できるQMKの機能)を使うことにしました。
(こっちが本質だったかも)
ただ、何も考えずにキーを並べたら73キーとなり、
プロマイクロ1個で普通に検出できるキー数をオーバーしてしまいました。
脱プロマイクロ(atmega32U4直乗せ)やプロマイクロ2個使うなどの選択肢もありましたが、
ちょうど111キーボードなどで採用事例が増えてきたDuplex-matrixというキー検知方法を採用しました。
ざっくりどんなもんか説明すると、通常Col→Rowに向かって(もしくはその逆で)電気を流してキー入力を検出するのですが、
Col→Row、Row→Colと交互に電気の流れを入れ替えることで、
検出できるキー数を2倍にするものです。
ファームはちょっと工夫*2する必要がありますが、
無理やり行数増やしたりするより物理配線がスッキリするので、
72キー以下でも採用の余地はあると思います。
RGBMATRIXとDuplex-matrixを同時採用したキーボードは前例がなかったのでファームがちょっと面倒でした。
Silverbullet44の再設計
ひとつは前述のYS-SK6812MINIに対応したいというのと、
アルミ基板の歩留まりが悪すぎたので、
別のプレートを考えるのが必須課題でした。
その他、ざっくばらんに。
金属筐体やるん?
正直、そもそも金属筐体やるかの葛藤がありました。
試作・設計コストが大きいのもですが、
サンドイッチのDIY感も好きなので、昨今のハイエンド思考*3というかに、
全面加担したくはなかったというのが本音です。
もともとSilverbullet44は3Dプリントのトップマウントとサンドイッチに両対応するというコンセプトがあったので、
サンドイッチも出す!ことを金属筐体キーボードを作る免罪符にしました。
ウェイト入れるん?
削り出しキーボードの場合部品点数がコストにがっつり響いてきます。
つまり左右分割の時点で一体型に比べ、倍(とまでは言わないものの)近いハンデがあります。
ここでさらにウェイトを入れるとコストがやばいことになるので、今回はウェイトは不採用にしました。
// ちなみに組み立て後の重さは両手併せておよそ1.5kgになる見込みです。
リバーシブルやめる?
リバーシブル設計がコスト面で大したメリットがないというのは周知の事実です。
あえてやめなかったのは、最初にHelixを組み立てたときの2つの感動を思い出したからです。
- キーボード左右対称でいいんだ!(むしろいままで左右対称じゃなかったんだ…)
- 左右対称だと基板裏返して使えるん!?
うまく言語化できないのですが、人間工学的と工業的な都合が合致したエコシステムというか、合理性みたいなものが好きなのを思い出して脱リバーシブルはやめました。
でっかいOLEDディスプレイ対応
いやーディスプレイなんだかんだかっこいいので、Silverbulletの真ん中の空間に入れさせてもらいました!
国内だとYosino58が対応していますね。
表示内容もファームをちょっとがんばって洒落たことしているのでご期待ください。
ICやってます
素材や色についてはまだまだ悩んでいて、
少しでも興味持っていただいた方と一緒に最終製品仕様を決めていきたいと考えています。
5分くらいのアンケートなので軽い気持ちでご回答いただければありがたいです。
総評
自作キーボードもここ数年で考え方とか求められることが全然変わって来ていますが、
びあっこさんのアドカレの「ものづくりの民主化」のマインドは、
FDMの3Dプリントに限らず自作キーボードの本質的なとこだと思っているので大事にしたいと考えています。
そういう意味では今年はプライベートバタバタしていてあまり時間を使えない中ではありましたが、
自分の中にある芯は通しつつ、YS-SK6812MINIやRGBMATRIX、Duplex-matrix、金属筐体など比較的新しいことも取り入れられた一年だったと思います。
世間は大変なときにも関わらず、とにかく自由によく光るわけわからんキーボードを作れて、
しかもありがたいことに買ってくれる人がたくさんいて幸せでした。
来年もメーカーでは絶対に作れない、「ぼくのかんがえたさいきょうのきーぼーど」を排出していきます!!
Good hack your input!